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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(あ)3708号 決定

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人筒竹健一の負担とする。

理由

被告人筒竹健一の弁護人音喜多賢次の上告趣意第一点について。

論旨は、判例違反をいうが、控訴趣意において主張せず原審の判断を経ていない事項に関するものであるから、上告適法の理由とならない。(一審判決認定によれば、被告人筒竹は判示明神村村長として同村を統轄代表していたものであるから、判示村長名義の各文書を作成する職務権限を有することは明らかであり、従ってその作成した右文書の記載内容が虚偽であるに止まりその作成名義には何らの偽りがないのであるから、たとえ右被告人において所論のように専ら第三者の利をはかる等不法な意思に出でその職務権限の乱用と認むべき場合であっても、刑法一五六条の罪が成立し、同法一五五条の罪が成立するものではない。大正一一年一二月二三日大審院判決、判例集一巻八四一頁参照。所論引用の各判例は、本件とは事案を異にし適切でない。)

同第二点及び被告人滝本哲也の弁護人野本豊の上告趣意について。

論旨は量刑不当の主張を出でず、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条(被告人筒竹健一のみ)により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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